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医療政策における「医療用医薬品」から「一般用医薬品(第一類医薬品)」への積極的な転用に関する質問主意書
質問第九四号
医療政策における「医療用医薬品」から「一般用医薬品(第一類医薬品)」への積極的な転用に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
平成二十二年六月十一日
川 田 龍 平
参議院議長 江 田 五 月 殿
医療政策における「医療用医薬品」から「一般用医薬品(第一類医薬品)」への積極的な転用に関する質問主意書
平成二十二年四月七日の衆議院厚生労働委員会において、長妻厚生労働大臣は鴨下委員からのスイッチOTCにかかる質問に対し、「平成二十二年においても、胃腸薬やアレルギー用薬や消炎鎮痛剤なども新たにスイッチOTCになる予定になっておりますし、二十一年においては四種類、これはヘルペスの薬とか消炎鎮痛剤などなどでありますけれども、そういうものは徐々にOTCとして一般の薬局でも売るということになっております。これについても、さらにこういう候補としてふさわしいものがあれば、それは積極的に進めていく必要があるというふうに考えております。」と答弁している。この答弁のとおり積極的にスイッチOTCが進むとなれば、現在、医療用医薬品として使用が制限されている医薬品が薬事法第三十六条の三の規定で定義されている「第一類医薬品」等に転用され、医師の処方せんを要することなく薬局等の店頭で購入できる医薬品の選択の幅が拡大されるものと推測される。一般用医薬品のなかでも特に「第一類医薬品」に分類される医薬品は諸外国の事情を鑑みるに、英国や豪州が定義するところの「薬剤師が管理販売する薬剤師管理医薬品」と同等の意味づけがあると推察され、薬剤師が対面で患者個々の状態に応じたカウンセリングを実施することによって、医薬品の適正使用と生活者の安全に配慮した医薬品供給体制を体現しているものと理解する。これは、セルフケアの領域で薬剤師職能を活用しながら国民の健康増進を図る政策として非常に期待される。しかしながら、直近の世論調査などからは、このように議論をつくされ導入された第一類医薬品の使用状況が芳しくない実像が確認されている。例えば、平成二十二年五月二十三日付の日本経済新聞の報道によれば、改正薬事法が施行され、第一類医薬品が導入されて以降、当該医薬品の売り上げが二〇%近くも減少し、併せて第一類医薬品を取り扱う販売店数も二〇%以上減少しているという。また、ドラッグマガジン(平成二十二年三月号)が生活者に実施した意識調査でも、第一類医薬品へのアクセスが容易でなくなったという類の意見が三〇%強を占め、その一因として「薬剤師が不在であった」という回答が二六%を占めている。薬事法改正は医薬品の安全性に配慮しつつセルフケアを充実させ、国民の健康増進を図るために実施されたものの、第一類医薬品の販路が減少傾向にあってアクセスが容易ではなく、また、医薬品の適正使用と安全確保を担保する薬剤師を十分に活用できていない現状が浮き彫りとなっている。こうした状況を憂慮し、現行制度の枠組みを有効活用するために医薬品使用の安全確保及び国民の健康増進の観点から、以下質問する。
一 第一類医薬品の販売においては、薬剤師によるカウンセリングが求められ、必要であれば医師への受診勧奨がなされるものと周知されているところである。専門家による評価が実施されているという観点から考察するならば、第一類医薬品の販売は医師による治療(キュア)と完全なる「自己判断による治療(セルフケア)」との中間に位置していると言え、両者のパイプ役として薬剤師を活用し、生活者の利便性を向上させる一方で、専門家による判断プロセスを巧みに取り入れることによって、医薬品の適正使用及び安全性確立への配慮がなされた制度設計であると評価する。諸外国においても、例えば、英国及び豪州においては、第一類医薬品に該当する医薬品として「薬剤師管理薬(Pharmacist Only Medicine または Schedule 3)」が設定され、我が国よりもはるかに多くの成分が、処方せんを必要とする処方せん医薬品から当該分類の医薬品に転用され、薬剤師の積極的な介入の下に広く利用に供され、国民の健康増進に寄与していると聞く。こうした諸外国の現状と比較し、我が国においてスイッチOTCが遅々として進まない理由について政府の見解を明らかにされたい。
二 薬事法第二十五条では、「その効能及び効果において人体に対する作用が著しくないもの」を一般用医薬品と定義している。この場合の「人体に対する作用が著しくないもの」というのが、一般用医薬品と医療用医薬品の分水嶺であると理解するところであるが、一般用医薬品への転用にかかるリスク評価を策定するうえでの具体的な基準について示されたい。
三 平成十八年度より薬学部の教育年限が四年から六年へと延長され、医療薬学教育の充実が図られたところであるが、二で述べたリスク分類策定プロセスの具体的基準において、薬学部の教育年限延長がもたらす薬剤師の専門性の充実が、その基準策定過程において反映されているかどうかについて政府の見解を明らかにされたい。
四 先に示した報道及び意識調査によれば、第一類医薬品の使用状況は停滞傾向にあり、国民に広く利用される機会が提供されているとは言い難い状況にある。このような現状につき販売店舗の確保及び薬剤師職能の活用という観点から政府の見解を明らかにされたい。
右質問する。
答弁書第九四号
内閣参質一七四第九四号
平成二十二年六月二十二日
内閣総理大臣 菅 直 人
参議院議長 江 田 五 月 殿
参議院議員川田龍平君提出医療政策における「医療用医薬品」から「一般用医薬品(第一類医薬品)」への積極的な転用に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
参議院議員川田龍平君提出医療政策における「医療用医薬品」から「一般用医薬品(第一類医薬品)」への積極的な転用に関する質問に対する答弁書
一について
お尋ねの理由としては、スイッチOTC(一般消費者が自らの判断に基づいて薬局等で購入する医薬品(以下「一般用医薬品」という。)であって、医師の処方する医療用医薬品に限って使用されていた有効成分を初めて含有することとなるもの)としての承認に伴う開発リスクと販売予測とのバランスを考慮した結果として、当該承認に係る申請があまり多くないこと等があるものと考える。
二について
お尋ねの具体的な基準としては、「一般用医薬品承認審査合理化等検討会」が平成十四年十一月八日にまとめた中間報告書において示した「スイッチ成分の選択の要件」があり、具体的には、①医療用としての使用実績があり、再審査又は再評価が終了しており、副作用の発生状況、海外での使用状況、再審査又は再評価結果等からみて一般用医薬品として適切であること、②医師の指導監督なしで使用しても、重篤な状態になるおそれのないもの、③習慣性、依存性、耽溺性がないこと、④麻薬、覚せい剤、覚せい剤原料、毒薬、劇薬でないこと、⑤薬物相互作用により重篤な副作用が発生しないこと、⑥国民の選択の幅の拡大が期待できるものという点が掲げられている。
三について
「スイッチ成分の選択の要件」については、平成十四年に策定されたものであるが、薬学部の修業年限延長についての本格的な検討も同年に開始されたものであり、御指摘の薬学部の修業年限延長がもたらす薬剤師の専門性の充実が、「スイッチ成分の選択の要件」の策定に直接反映されているわけではない。
四について
政府としては、薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第三十六条の三第一項第一号に規定する第一類医薬品の適切な選択と適正な使用を促進することは、自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てするといういわゆるセルフメディケーションの推進を図り、国民が自らの健康を守るという観点から重要であり、薬局及び店舗において、第一類医薬品が適切に販売又は授与されるよう、医薬品に関する高度な専門的知識を持つ薬剤師が活用されることが適当であると考えている。このため、第一類医薬品については、その副作用等により日常生活に支障を来す程度の健康被害が生ずるおそれがある医薬品のうち、その使用に関し特に注意が必要なものであることを踏まえ、薬事法第三十六条の五の規定に基づき、薬剤師に販売又は授与させなければならないこととしている。また、第一類医薬品に係る販売又は授与に対応できる体制の確保を図るため、薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令(昭和三十九年厚生省令第三号)第二条第一項第六号の規定に基づき、店舗販売業のうち、第一類医薬品を取扱う店舗販売業に対しては、第一類医薬品を販売又は授与する営業時間の一週間の総和が一般用医薬品を販売又は授与する営業時間の一週間の総和の二分の一以上でなければならないこととしている。


